【25日まで!】ozone:川上元美 デザインの軌跡展

25日まで開催中の、リビングデザインセンターOZONE「MOTOMI KAWAKAMI CHRONICLE 1966-2011 川上元美 デザインの軌跡」は、デザインに関係する人たちにはぜひご覧いただきたい展覧会である。

川上元美氏は、「箸から橋までをデザインするデザイナー」と呼ばれている、非常に幅広い分野で活躍しているプロダクトデザイナー。1960年代後半からデザイン活動をはじめ、40年以上にわたり第一線で活躍している。

この展覧会では1966年に渡伊しアンジェロ・マンジャロッティ氏に師事してから現在までの45年におよぶ氏のデザイン活動の奇跡を紹介する。 shakkinkaiketu.com

川上氏の代表作にアルフレックスのチェア「NT」やカッシーナのフォールディングチェア「BRITZ/TUNE」などがあるが、先ほど「箸から橋まで」と例えたようにもちろんデザインは椅子にとどまらない。チェアにソファにライト、テーブル、ウィスキーの瓶、お茶の缶、漆器、そして橋、神棚……。川上氏が手掛けたプロダクト、家具、インテリアは800点以上にのぼる。
非常に幅広い領域にわたって、さまざまなプロダクトを手掛けているが、ひとつひとつ見ていくと、どれも非常に上品で真面目につくられたものだということがうかがえる。それも氏の人柄ゆえのことなのだろう。

そんな幅広いジャンルにわたる膨大な数の氏の作品を、まるで宝物を探していくような斬新な構成で見せてくれたのは、トラフ建築設計事務所である。会場入り口すぐのエリアは、川上氏が手掛けた椅子の作品を見せる空間になっている。

ホワイエ正面

ホワイエ正面

奥のホールに行くと、大小さまざまな大きさの四角いボックスの中に各作品の実物や映像、スケッチなどが展示されている。正面から見ると四角い小屋ばポコポコとあるだけで、どんなプロダクトがあるのかは伺い知れない。箱と箱の間は小道のようになっており、その通路を歩いていると側面に開けられた窓から、その箱の中のプロダクトがチラリと見える。そのチラリにそそられて、いろんな箱をのぞいて廻るというような仕掛けだ。窓からは、川上氏の姿もチラ見することができる。

正面から見るとこんな感じ。箱が織り重なっている。奥に川上氏の姿が。

俯瞰正面

上から見るとこんな感じ

さらに奥へと進んでいくと、川上氏が多く手掛けた椅子が並べられた広場に出る。その広場では氏の椅子に実際に座ることができ、資料などを閲覧できる。

広場

実際に座り心地も試してほしい

もうひとつ面白いのがスタイリスト長山智美さんによる、川上さんのお部屋である。この部屋は本展のために作られたもので、川上氏が手掛けたプロダクト、ま た川上氏の自宅の家具をヒントに「川上さんがもし南国に別荘を持っていたら」と構想を広げ、長山さんが集めてきたエスニック調の布やプロダクトでスタイリ ングされている。

長山智美さんがスタイリングした部屋

また、高い山の山野英之さんが手掛ける展覧会のグラフィックも秀逸なのでぜひご覧いただきたい。会場全体のサインに使用されている書体はSABON。これ は川上氏がデザイン活動を始めた1966年と時期を同じくして発売され、現在でも多くのデザイナーに愛されている書体。川上氏のデザインのようにシンプル かつ上品で長きにわたり愛されている書体をサインと展示ロゴにあしらった。展覧会のメインヴィジュアルにも注目してほしい。通常家具やプロダクトのデザイ ナーの展覧会であれば、作品の写真やそのフォルムを模したモチーフが並ぶグラフィックになるはずだが、シャキーンと斜めに入ったグラデーションの1本の 線、それのみ。氏の多岐にわたるデザイン活動と時間の経過を1本の線に託した、非常に潔いデザインである。

メインヴィジュアル

主役はもちろん川上氏の洗練されたプロダクトや家具の数々なのだが、その展示方法やサイン等にも注目してぜひご覧いただきたい。明日まで!お見逃しなきよう!

会期     2011年9月9日(金)~ 9月25日(日)
時間    10:30~19:00
会場    リビングデザインセンターOZONE(3F パークタワーホール)
〒163-1062 東京都新宿区西新宿3-7-1新宿パークタワー
主催    川上元美展をつくる会、カワカミデザインルーム
企画制作    株式会社 TRUNK
特別協力    リビングデザインセンターOZONE
入場料    無料
問い合わせ先    03-5322-6500(10:30~19:00 水曜日休館)

(取材・文・写真下2点:上條桂子、写真上4点:大木大輔)

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