今年も秋のデザインイベントウィークが始まった。
都内のいたるところで、家具、建築、プロダクト、グラフィック、ファッション……といったデザインにまつわるさまざまなイベントが開催されている。
デザインイベントの中核をなす、DESIGN TIDE TOKYO2011 jazzfes.comの会場に行ってきたので、さっそくレポートしたい。
まず最初に目に付いたのは「Mark-ing」展のブース。
British CouncilとE&Yが共同で行ったプレゼンテーションで、全体のキュレーションをE&Yの松澤剛、イギリスサイドのキュレーションをMax Fraserが務め、各国8名ずつのデザイナーの活動が紹介された。会場およびグラフィックデザインはスープデザインの尾原史和。この展示で興味深いのは、単にデザイナーの最新の仕事を紹介するのではなく、新旧問わずデザイナーの作品ひとつと、血脈にとくとくと流れている精神「Fragment」を紹介しているところだ。
例えば、織咲誠の「Hole Works」は1990年に発表されたもの。身の回りにある大量生産品にただ穴を空ける、それだけでそのものがアートピースになるという作品だ。
織咲氏のFragmentはプラスチック。
中村竜治が展示したのは「hechima」。薄い木の板をひたすら波形に成形して作ったもので、氏の作品ではさまざまな素材でこのようなやわらかくて固いヘ
チマ構造が登場する。中村氏のFragmentは「波板」である。納得。
イギリス勢も紹介しておこう。1984年生まれの若手作家Benjamin Hubertである。彼が提示したFragmentは「絵筆」。大学ではデザインを専攻し、それまでやっていた絵筆は一度も触っていない。しかし、作品の断片には絵筆の存在がある、のだという。
キュレーションを務めた松澤氏は「今回紹介するデザイナーたちが取り組んでいるデザインは、決して表層ではなく、流行でもない。彼らをひとつの作品ではなく“人”として紹介したかった」と語る。なるほど、紹介された方たちの活動をすべて知っているわけではないが、数名のデザイナーの断片を見ると、ずっとしつこく同じことを問い続けているような、研究者、あるいは求道者のような精神が見えてくる。
もうひとつ、海外勢を紹介しておこう。
「MADE HERE」という家具シリーズを発表したスイスのデザイナーColin Schaelliだ。con. temporary furnitureと名づけられたその家具は、ラーチ(唐松)またはシナのプライウッドの合板を素材とし、1枚の畳のサイズを規格とし、それをグリッドで等分してひとつの家具ユニットが作られ、ネジやビスは一切使わない、組木の手法で作られている。生産については、スイスと日本の2拠点で行っており、輸送コストを大幅に軽減。家具量販店のものではなく、しかし適正な価格で、シンプルかつ丈夫な家具を提供しようという試みだ。
棚がいかに丈夫か、を表す商品のヴィジュアルも秀逸だし、シリーズのネーミングセンスも抜群である。販売はオンラインで行う。このURLもイイネ!
https://www.ownlineshop.com/
今年は、メインのエキシビションに加え、TIDE tableと呼ばれるトークイベントのコーナーが設置され、期間中毎日デザインの仕事に携わるクリエイターのレクチャーが開催される。テーマは「ジャーナリズム」「デザインイベントの意義」「建築家が考える復興」「ドイツのデザイン」等々、何かモノ作りをするデザインだけではなく、その場や社会を作り上げるデザインにいたるまで幅広い議論がされることが予想される。
タイムテーブルは以下をご参照いただきたい。
httpss://designtide.jp/table-tide2011/
取材・文/上條桂子(フリー編集者)