〜3/25まで「今和次郎 採集講義」汐留ミュージアム

現在パナソニック電工汐留ミュージアムで開催中の、「今和次郎 採集講義」展が面白い。
ご存知の人も多いとは思うが、今和次郎は「考現学(こうげんがく)」の創始者として知られる人物だ。ちなみに「考現学」とは、現在について考える学問であり、氏による造語である。ある社会現象を場所や時間を定めて調査・分析し、世相や風俗を読み解く。いまでいうマーケティングリサーチの礎を築いた学問と言えよう。路上観察学なども、今氏の視点からきているものと思われる。

展覧会では、今氏の考現学に至るまでのスタイルを作り上げた初期の「農村調査と民家研究」に始まり、「関東大震災後の瓦礫に埋もれた都市の調査、考現学の誕生」、そして、「建築やデザイン、図案の仕事」と大きく3つに分けて構成されている。

展示では膨大な量におよぶ氏のスケッチや調査メモが展示されているが、今氏独特の仔細なスケッチと対象の周辺に及ぶ詳細な描写、ミクロとマクロの視点を持ち合わせた調査と分析は初期の頃から変わらない。

考現学の調査は、とにかく内容が面白い。「東京銀座街風俗記録」では、銀座一帯の飲食図マップにはじまり、「東側と西側の人出の比較」「通行人の分布」「男の着物」「男の履物」「男の帽子」なんてものは序の口で、通行人の「髭」の形の調査や衿のかたち、時計の鎖の素材(金銀黒)、はたまたタバコの吸い方(左手、右手、パイプ等)、女性のスカートの裾の長さや化粧の仕方についてまで幅広く調査。これはあくまで一例であり、今氏の調査は銀座から飛び出て郊外へ、海外にまで及び非常に幅広い人々の暮らしぶりを伝えている。

その調査の切り口も面白いのだが、内容を非常にわかりやすいスケッチでヴィジュアル化した表にしているところが、単なるマーケティング調査とはまったく違うところである。

デザイン全般に携わる方々にぜひご覧いただきたい展示である。また、本展に際して刊行された書籍『今和次郎 採集講義』も素晴らしいので、ぜひお手に。今氏の魅力的なスケッチをさらに際立たせた宣伝美術と書籍のデザインを担当したのは菊地敦己氏。
展覧会は25日まで。

【今和次郎 採集講義】
会期:~2012年3月25日(日)
会場:パナソニック汐留ミュージアム
〒105-8301 東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
ハローダイヤル 03-5777-8600
時間:  午前10時より午後6時まで(ご入館は午後5時半まで)
料金: 一般:500円(65歳以上400円)、大学・高校生:300円、中・小学生:200円
公式サイト https://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/12/120114/

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